成年後見制度利用促進基本計画に関わるパブリックコメント2017年02月23日 21:33

2017年1月21日版

特定非営利活動法人 よこはま成年後見 つばさ
理事長 須田 幸隆
045-744-5600

成年後見制度利用促進基本計画に関わるパブリックコメントについて
〜資力が乏しくとも容易に使える制度を目指して〜

<はじめに>
 私たちの法人は、横浜でNPO法人としては最初の法人後見実施団体です。設立後、5年が経過しています。現在会員は61名で、そのうち33名は福祉事務所などのケースワーカーとして働いてきた横浜市の社会福祉職OBです。
法人としては、これまで延42件の受任実績があります。法人の中枢を担う幹部は、社会福祉士として長年、個人後見にも従事してきましたが、後見業務だけでなく社会福祉全般に精通しています。地域に構築したネットワークがあります。私たちの法人後見は、その相談力、社会資源を生かして行うのが特色です。また、法人の基本理念は「誰にも等しく権利擁護」で、生活保護受給者など資力の乏しい方々をその主たる守備範囲とし、金銭管理はもとより身上監護に力を入れています。
 その立場から成年後見制度利用促進基本計画の案作成に当たっての成年後見制度利用促進委員会の「意見」について、以下の15テーマ30項目の提言をパブリックコメントとして、提出いたします。

1.「成年後見制度の基本的あり方」について
委員会意見 3ページ 14行目 4ページ 1行目
………………………………
○ さらに、これまでの成年後見制度が、財産の保全の観点のみが重視され、本人の利益や生活の質の向上のために財産を積極的に利用するという視点に欠けるなどの硬直性が指摘されてきた点を踏まえると、本人の意思決定支援や身上保護等の福祉的な観点も重視した制度とする必要があり、今後一層、③身上の保護の重視※3の観点から個々のケースに応じた適切で柔軟な運用が検討されるべきである。
○ 成年後見制度においては、後見人による財産管理の側面のみを重視するのではなく、高齢者や障害者の意思をできるだけ丁寧にくみ取ってその生活を守り権利を擁護していく意思決定支援・身上保護の側面も重視し、利用者がメリットを実感できる制度・運用とすることを基本とする。
………………………………
意見
 新しい成年後見制度は、単なる財産管理の制度ではなく生活保護受給者など資力が乏しい人も含めて、生活の質の向上、権利擁護のための制度です。従って、それを実現すべく制度運営を行うべきだし、体制整備・法整備が行われるべきです。
 また、安定して生活している被後見人等に対して、よく面会している後見人でも月に1回程度、形式的な面会で済まされているのが現状です。後見人の活動が身上監護に関する事実行為も含めて評価されることが望ましい意思決定支援に繋がるのではないでしょうか。

提言
 ①家庭裁判所の財産管理中心の考え方を抜本的に改めること
 ②後見業務では、付加扱いの身上監護を財産管理と同等の扱いとすること

理由
 内閣府での議論を見ても、今もって制度の課題として「財産の保全の観点のみが重視され、本人の利益や生活の質の向上のために財産を積極的に利用するという視点に欠ける」
「財産管理の側面のみを重視するのではなく、高齢者や障害者の意思をできるだけ丁寧にくみ取ってその生活を守り権利を擁護していく意思決定支援・身上保護の側面も重視し、利用者がメリットを実感できる制度・運用とする」としています。これでは、資力が乏しくとも生活の質の向上、権利擁護のために使う制度という視点の遥か手前の議論です。しかし、これが現在の制度運用の実態です。これを変革するには、まずは裁判所の考え方を抜本的に改める必要があります。

2.「法人後見の活用が有用である」について
委員会意見 14ページ 17行目 10ページ 25行目
………………………………
○ 法人後見の担い手の育成・活動支援
 若年期からの制度利用が想定され、その特性も多様である障害者の場合、継続性や専門性の観点から、法人後見の活用が有用である場合もあり、後見監督等による利益相反等への対応を含めた透明性の確保を前提に、その活用を図っていくことが考えられる。
○ 権利擁護支援が必要な人について、本人の状況に応じ、後見等開始前においては本人に身近な親族や福祉・医療・地域の関係者が、後見等開始後はこれに後見人が加わる形で「チーム」としてかかわる体制づくりを進め、法的な権限を持つ後見人と地域の関係者等が協力して日常的に本人を見守り、本人の意思や状況をできる限り継続的にフォローする仕組みとする。
………………………………
意見 
 チームで取り組む法人後見は、個人後見に比して優位性が数々あります。必要な場合には、地域の民生委員等と見守り体制構築にも努めています。
 今後の成年後見制度の課題である「利用促進策」及び「不正防止対策」には、未だ社会的認知の遅れている法人後見普及が一番適っているし、緊急にできる施策と考えます。
 
提言
 ③国は、法人後見の普及・啓発に取り組むこと
 ④市町村は、成年後見制度法人後見支援事業を完全実施すること
理由
 新しい成年後見制度においても、後見人は個人が原則とされ、例外的に法人が選任されるとされてきました。私たちは、社会福祉士として長年個人後見にも従事してきました。
 しかし、チームで対応する法人後見は適切な身上監護と財産管理の確保で個人後見よりもはるかにその優位性があります。厚生労働省も平成25年度から、成年後見制度法人後見支援事業を地方自治体の必須事業と定めています。しかしながら法人後見の普及は、平成27年の統計では全体に占める割合は、未だ5.6%程度です。
 また、後見人がキーパーソンになって民生委員や大家、ゆうちょ銀行等と地域に見守り体制を構築した事例もあります。連携を重視する法人後見ならネットワーク構築もできます。すぐできる利用促進策及び不正防止対策として、まず上記の2点を提言します。

3.「法人後見の担い手を育成する」について
委員会意見 5ページ 28行目 14ページ 11行目 13行目
………………………………
○ 今後の成年後見制度の利用促進の取組も踏まえた需要に対応していくため、地域市民の中から後見人候補者を育成しその支援を図るとともに、法人後見の担い手を育成することなどにより、成年後見等の担い手を十分に確保する。
○ 後見人の受任者調整を円滑に行うためには、専門職との連携、市民後見人育成に加え、法人後見の担い手の確保が必要となる。
○ 担い手の候補としては、社会福祉協議会や、市民後見人研修修了者・親の会等を母体とするNPO法人等が考えられ、市町村においては、引き続きそうした主体の活動支援(育成)を積極的に行うものとする。
………………………………
意見
 今後の地域での成年後見制度利用促進には、これまでの職業後見人や親族後見人はもとより、地域に根ざした市民後見人と法人後見人がその鍵を握っていると考えます。担い手の候補者には、生活相談の経験豊富な行政の社会福祉職OBやそれを母体とするNPO法人も活用すべきです。
 また、各自治体で養成される市民後見人が社協以外の団体でも制約なく活動できるようルールを改める必要があります。既存のNPO等による民間NPO団体の活性化・継続的活動につながっていくと考えます。

提言
 ⑤行政は、社会福祉協議会に限らず法人後見実施団体を育成・支援すること
 ⑥担い手の候補としては、行政の社会福祉職OBを母体とするNPO法人も活用すること

理由
 今後の地域における成年後見制度利用促進には、地域に根ざした市民後見人や法人後見実施団体を行政が育成・支援することが喫緊の課題です。取り分け地域には永続性、専門性、実践力のある小規模の法人後見実施団体がいくつも必要です。横浜市は、福祉事務所や児童相談所等で働くケースワーカーを50年来社会福祉職として採用してきた稀有の自治体です。横浜では、その社会福祉職OBが中心になって独自にNPO法人を設立し、税金に依拠せず法人後見を実施しています。既に地域の相談拠点となり、新聞では「法人後見で先駆的成果」と報道されるまでに成長しています。

神奈川新聞 2015年12月3日 法人後見で先駆的成果
http://www.ne.jp/asahi/hama/tubasa/newspaper2015.12.3.jpg

4.「社会福祉法人の取り組み」について
24ページ 16行目 28ページ6行目
………………………………
○ 社会福祉法人においては、地域の様々なニーズを把握し、これらのニーズに対応していく中で、地域における公益的な取組の一つとして、低所得の高齢者・障害者に対して自ら成年後見等を実施することも含め、その普及に向けた取組を実施することが期待される。
○さらに、基本計画の策定後の施策等の実施の場面においても、円滑な実施等の観点から、更なる法制上の措置等が必要となることも十分に考えられる。
………………………………
意見
 障がい者の入所施設・通所施設の利用者の親御さんたちから運営する社会福祉法人に対して法人後見実施を求める声は、全国津々浦々にあります。家裁をはじめ関係者は、利益相反の問題でこの声を遮断するのではなく、その問題を克服して実現する方向性を示すべきではないか。
 なお、H28年度厚労省指定課題研究18における実態調査先にしたいくつかの法人で社会福祉法人の協力を得ながら円滑に活動しておられました。たとえば岡山県の重心施設Y荘の親の会が設立したNPO法人は、社会福祉法人から事務所の提供や事務連絡手続きに関する人材提供うけています。利益相反の問題については外部から専門家を定期的に入れることで利用者の権利擁護に努めていました。

提言
 ⑦社協の法人後見の場合は、決裁権者を分離するなど組織改正の工夫していること
⑧一般的には、NPO法人など別組織を設置して対応していること

理由
 社会福祉法の改正により、社会福祉法人にはその持てる人材・財源(人財)を活用して地域の社会問題に取り組む社会貢献が求められています。利益相反の問題は、法律的には厳格ですがその問題を超えていく工夫(別組織、監督人、特別代理人など)をし、利用関係をより透明にする義務付けを行えば、運営法人自体が法人後見に取り組む途も切り拓けるのではないか。何よりも、障がい理解、本人理解に長けている法人による法人後見は、本人や家族が安心でメリットを感じられるのではないかと考えます。
 
5.「公後見」について
委員会意見 5ページ 28行目 28ページ6行目
………………………………
○ 今後の成年後見制度の利用促進の取組も踏まえた需要に対応していくため、地域市民の中から後見人候補者を育成しその支援を図るとともに、法人後見の担い手を育成することなどにより、成年後見等の担い手を十分に確保する。
○さらに、基本計画の策定後の施策等の実施の場面においても、円滑な実施等の観点から、更なる法制上の措置等が必要となることも十分に考えられる。
………………………………
意見
福祉的支援の必要性が認められながらも個人後見人やNPO法人では、受任が困難な事例があります。公的責任を持つ機関(公後見)が受任し、問題が解決し安定した後に市民後見人やNPO法人に引き継ぐ仕組みもこれからは必要ではないか。

提言
 ⑨国は、公後見のあり方を研究すること
⑩その間は、社協の法人後見で対応すること

理由
私たち法人後見には、行政などから比較的対応困難な事例が持ち込まれます。例えば、障害特性により信頼関係を築くことが難しい方、虐待など家族に複雑な事情を抱えた方、粗暴な方、触法行為を繰り返す方、報酬を払えず利用支援事業も受けられない方などは、個人後見人やNPO法人ではなかなか引き受けることは困難です。こうした事例には、現在の法定後見制度の中では設計されていない「公後見」での対応を行うべきです。また、その間は税金が投入され、公後見に一番近い社協の法人後見が対応すべきではないか。

6.「後見報酬」について
委員会意見 2ページ 30行目 27ページ 31行目 28ページ 6行目
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○これらの状況からは、社会生活上の大きな支障が生じない限り、成年後見制度があまり利用されていないことがうかがわれる。
○促進委員会では、促進法の立法趣旨を踏まえ、現行法の枠組みを前提として、その促進策を検討したが、障害者の権利に関する条約の批准など国際的動向を踏まえ、本人の意思決定支援の尊重の観点からは、現行の成年後見制度の三類型の在り方を含め、本人が、必要な支援を、必要な期間、必要な場面に限定して利用できるよう、制度を改善すべきであるなどの指摘もされたところである。
○さらに、基本計画の策定後の施策等の実施の場面においても、円滑な実施等の観点から、更なる法制上の措置等が必要となることも十分に考えられる。
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意見
後見報酬については本人負担が基本的な考え方になっていますが、障害者の場合は収入の殆どが障害者年金によるという方が少なくないのが現状です。加えて後見期間が長くなるので第三者後見人を利用するには負担感が大きく、ギリギリまで制度を利用しないとの考えの一因になっています。障害者総合支援法等の改正など報酬負担を軽減するための施策が必要だと思います。

提言
⑪障害者総合支援法等において後見報酬を個別給付とすること
⑫もしくは年会費等で利用できる法人後見の設立を支援すること

理由
 厚生労働省指定課題18に取り組んで、予想以上に報酬負担が制度利用の阻害要因になっていることが判明しました。親は年金暮らしになって、自分も後見人が必要になるかもしれないことに加え、障がいのある子どもの後見報酬を考えると不安であると切実な訴えを聞きました。一方で、法人後見実施団体の調査から会費で運営している法人の存在を知り、親なき後を安心して託していける法人後見を設立していくことが必要だと感じました。

7.「診断書作成時に本人の状況等を医師に伝えることができるようにする」について
委員会意見 4ページ 17行目 9ページ 22行目
………………………………
○ また、成年後見制度の利用、類型の決定手続において、本人の精神の状態を判断する医師が、本人の生活状況や必要な支援の状況等を含め、十分な判断資料に基づき判断することができるよう、本人の状況等を医師に的確に伝えることができるようにするための方策について検討するとともに、その判断について記載する診断書等の在り方についても検討する。
○ そこで、迅速な審判を図りつつ、より実態に即した適切な判断を可能とするため、医師が診断書等を作成するに当たっては、福祉関係者等が有している本人の置かれた家庭的・社会的状況等に関する情報も考慮できるよう、診断書等の在り方についても検討するとともに、本人の状況等を医師に的確に伝えることができるようにするための検討を進める。
………………………………
意見 
 後見類型が8割以上を占めている最大の要因は、医師の診断書にあるのではないか。能力は、財産管理の能力だけで判断すべきではないのではないか。客観的資料では「後見」と予測された事例について、母親がご本人の生活の中で出来ていることを詳しく医師に伝えたところ適切な類型(保佐)の診断となりました。支援関係者が本人の状況等を医師に的確に伝えることは必須です。

提言
 ⑬最高裁作成の診断書作成の手引きを改善すること
 ⑭医師が診断書作成時、親族や支援関係者からの意見聴取の機会を設置すること
理由
診断書を作成する医師は、後見類型の方が支援関係者に都合が良いのではないかと誤解しているのではないか。また、最高裁判所が示す診断書作成の手引では、財産管理の能力のみを問うていないか。能力は、単に財産(金銭)管理の能力をだけを問うのではなく、生活していく上での様々な能力を問うべきで、「できない」点だけではなく「できる」点についても評価されるべきです。

8.「地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的な機関の設置」について
委員会意見 5ページ 21行目 11ページ23行目
………………………………
○ 専門職による専門的助言等のサポートの確保や、協議会等の事務局など、地域連携ネットワークのコーディネートを担う中核的な機関(以下「中核機関」という。)の設置に向けて取り組む。
○各地域における連携ネットワーク及び中核機関については、以下に掲げるア)広報機能、イ)相談機能、ウ)成年後見制度利用促進機能、エ)後見人サポート機能の4つの機能について、段階的・計画的に整備されることが求められるとともに、オ)不正防止効果にも配慮すべきである。
………………………………
意見
 地域により事情が異なるのに、一律に市町村に中核機関の設置を求めることには反対です。また、中核機関はないよりある方がましですが、地域連携ネットワーク及び中核機関が利用促進機能を果たすかどうかはなはだ疑問です。むしろ地域での利用促進には、制度利用相談・申立支援・法人後見受任をワンストップで行う自称「後見の小規模多機能機関(CACE)」を設置することの方が大きな効果を期待できると考えます。

提言
 ⑮行政は、後見における小規模多機能機関(CACE)を育成・支援すること
 ⑯行政は、小学校区に一つNPO法人等による法人後見実施団体配置を目標とすること

理由
 市町村により事情が異なり財政事情も逼迫しているのに、コストのかかる中核機関設置を中央集権的に求めることには反対です。社会福祉は、障害者の地域移行・地域定着、地域包括ケアなど地域を基盤に進んでいます。
 地域で真に成年後見制度利用促進を図るためには、相談機能(Consultation)、申立機能(Application)、受任機能(Contractor)、教育機能(Education)などを備えた機関が、ワンストップで一体的に行うことが求められます。私たちはこれを後見における小規模多機能機関(CACE ケースと命名)と称しています。
 地方分権の視点からも、利用者が選択できるくらいの「後見の小規模多機能機関(CACE)」を地域に育てていくことこそが、時代要請、社会要請と言えるのではないだろか。

 なお、以下は提言されている地域連携ネットワーク及び中核機関の機能と私たち法人後見が実際に行なっているケースカンファレンス及び多機能の比較です。

地域連携ネットワーク・中核機関 法人後見でのケースカンファレンス
<地域連携ネットワーク>
開催は、計画的
開催回数は、多くて月1回 多分年数回
参加の規模は、大規模
参加者は、多職種 他機関
内容
・広報
・相談
・利用促進
・後見人支援
・不正防止
<中核機関>
・相談対応
・チームの支援
・協議会の開催
・家裁との連携
・後見人受任者調整等の支援 <ケースカンファレンス>
開催は、臨機応変
開催回数は、最低週1回
参加の規模は、小規模
参加者は、最小限の関係者
内容
・個別ケース処遇方針確定




<基本機能>
・利用相談機能(無料相談室)
・申立支援機能(申立支援専門員)
・法人受任機能(法人後見)
<付随機能>
 省略

 因みに私たちが考える多機能とは次の通りですが、そのほとんどを既に税金に依拠せずとも、私たち法人では実現できています。

●基本機能
①利用相談機能(無料相談室)
②申立支援機能(無料相談室 申立支援専門員)
③法人受任機能(法人後見)
●付随機能
④身上監護機能(定期的業務検討会)
⑤財産管理機能(定期的業務検討会)
⑥監督機能(複数の目によるチェック)
⑦牽制機能(複数の目によるチェック)
⑧スーパーバイズ機能(スーパーバイザー)
⑨代替機能(スーパーバイザー)
⑩親族・市民後見人支援機能(親族・市民後見人からの相談)
⑪制度普及・啓発機能(講演 市民公開講座 後見講談台本作成)
⑫研修機能(視察対応 市民後見人の実習 担当者研修)
⑬人材育成機能(担当者養成講座)
⑭業務評価機能(内部評価)
⑮調査・研究機能(厚生労働省指定課題等)
⑯政策提言機能(要望・意見具申)
⑰地域拠点機能(地域の相談場所)
⑱連携機能(関係機関との連携)
⑲ネットワーク機能(かながわNPO法人連絡会等)
⑳後見的機能(プロジェクトによる後見的支援)
㉑あんしんノート普及機能(引継書あんしんノート勉強会)
㉒預託機関機能(生活保護の預託機関)
●今後の機能
㉓法人後見実施団体養成・支援機能(養成講座開講)
㉔後見第三者評価の評価機関機能(評価システムの開発)
㉕モデル機能(つばさ方式の普及)

9.「不正事案の発生を未然に抑止するための仕組み」について
委員会意見 16ページ 1行目 19ページ 3行目
………………………………
○ 成年後見制度における不正事案は、親族後見人等の理解不足・知識不足から生じるケースが多くなっているところ、地域連携ネットワークやチームでの見守り体制の整備により、親族後見人等が孤立することなく、日常的に相談等を受けられる体制が整備されていけば、不正の発生を未然に防ぐ効果が期待される。
○ 成年後見制度が利用者にとって、安心かつ安全な制度となるためには、監督機能の更なる充実・強化が必要であるところ、家庭裁判所のみならず関係機関においては、不正事案の発生を未然に抑止するための仕組みについて、今後の積極的な取組が期待される。
………………………………
意見 
 不正事案のほとんどは親族後見人によるものです。その要因は、制度の理解不足ですが、そもそも刑法の親族相盗例が許される社会風土に問題はないのか。また、監督機関の後見人への管理・監督・監視の強化では、後見人が萎縮するだけです。それよりも後見業務の質の向上のため、福祉サービスに導入されている第三者評価を研究すべきではないか。

提言
 ⑰親族相盗例が導入されている社会風土、社会意識の変革が必要なこと
 ⑱後見業務に第三者評価導入を検討すること

理由
 横領事件の97%は、親族後見人によるものです。その要因の多くは制度の理解不足ですが、少し前に親族間の窃盗や横領は刑を免除する刑法の特例が、成年後見人に選任された親族にも適用されるかが争点となった訴訟がありました。一般的に刑を免除する私たちの社会風土、社会意識にこそ問題はあるのではないか。家計を共にしてきた親族後見人だけに刑を求めるのは、そもそも無理はないのか。社会全体が考える問題です。
また、不正防止対策の重要な視点は、監督機関による後見人への管理・監督、監視の強化だけではなく、後見人と共に課題を把握し、その課題解決までを考える第三者評価による後見業務の質の向上を図るところにあると私たちは考えます。そのことが結局は、不正事案発生の未然防止対策にもなります。私たちは、既に具体的な評価ツールを開発しています。

10.「生活保護受給者等にも後見等開始の審判の請求が適切に行われるべき」について
委員会意見 14ページ 32行目 20ページ 23行目 28ページ6行目 
………………………………
○ 生活保護受給者を含む低所得者等で、成年後見制度の利用が必要である高齢者・障害者についても、成年後見制度利用支援事業の更なる活用も図りつつ、後見等開始の審判の請求が適切に行われるべきである。
○地域支援事業実施要綱において、成年後見制度利用支援事業が市町村長申立てに限らず、本人申立て、親族申立て等を契機とする場合をも対象とすることができること、及び後見類型のみならず保佐・補助類型についても助成対象とされることが明らかにされているこ
とを踏まえた取扱いを検討すること。
○さらに、基本計画の策定後の施策等の実施の場面においても、円滑な実施等の観点から、更なる法制上の措置等が必要となることも十分に考えられる。
………………………………
意見 
 生活保護受給者など資力の乏しい方が成年後見制度を利用する例も多くなっています。典型的な例ですが、ホームレス自立支援施設の利用者が成年後見制度を活用しホームレスから脱却した例もあります。生活保護担当ケースワーカーには代理権等法的権限がなく、後見人が選任されて生活保護制度の運用が糾されることも散見されています。
 生活保護受給者を含む低所得者が成年後見制度を適切に利用するためには、成年後見制度利用支援事業の完全実施か生活保護法の改正が必要です。
 今後一層、ケースワーカーと後見人の連携を強化すべきです。

提言
 ⑲国は、成年後見制度利用支援事業の完全実施を指導すること  ⑳権利擁護の視点から生活保護法第7条 12条 61条 81条等が改正されるべきこと

理由
 認知症が進んだホームレスの方が、ホームレス自立支援施設から終の住処としてグループホーム入所に当たり、成年後見制度利用の相談がありました。申立費用について、Y市成年後見制度利用支援事業要綱では区長申立に限定しているため、区長申立の相談を助言しました。区役所での相談の結果は、本人申立(診断書では保佐相当)が出来るとの判断で、区長申立及び申立支援がなにもなされませんでした。やむなく申立費用を独自に工面し、支援付き本人申立を行いました。鑑定(後見)も行ったので鑑定費用も用意しました。
 市町村最大のモデルとなるべきY市でもまだ取り組みは不十分です。また、これは氷山の一角に過ぎません。例えば、生活保護受給者の本人申立や親族申立でも資力が乏しければ、申立費用が工面できません。
 成年後見制度が単なる財産管理の制度ではないこと、従って資力の乏しい方も利用することは議論をするまでもないことであって、その為には成年後見制度の運用改善や成年後見制度利用支援事業の完全実施が必要です。また、禁治産・準禁治産時代の生活保護法の改正も必要です。

11.「保佐及び補助の類型の利用促進を図る」について
委員会意見 3ページ 4行目 4ページ 24行目 23ページ 20行目
………………………………
○さらに、後見等の開始後に、本人やその親族、さらには後見人を支援する体制が十分に整備されていないため、これらの者からの相談については、後見人を監督する家庭裁判所が事実上対応しているが、家庭裁判所では、福祉的な観点から本人の最善の利益を図るために必要な助言を行うことは困難である。
○ 成年後見制度の利用者の能力に応じたきめ細かな対応を可能とする観点から、成年後見制度のうち利用が少ない保佐及び補助の類型の利用促進を図るとともに、利用者の自発的意思を尊重する観点から、任意後見制度が適切かつ安心して利用されるための取組を進める。
○ 保佐・補助を含めた成年後見制度の利用の促進による事件数の増加に対応できるよう、裁判所の人的・物的体制の更なる充実強化が望まれる。
………………………………
意見 
 残存能力を活用する、自己決定を尊重する福祉理念からも、保佐及び補助類型の利用促進は理想です。しかし、家裁は審判業務のほか監督業務も行っています。監督業務は家裁の本来業務ではないのではないか。保佐及び補助類型の利用促進には、まず家裁の審判業務と監督業務の分離など制度設計の抜本的改革が必要ではないか。

提言
㉑家裁は、審判業務のみに従事すること
 ㉒監督業務は、家裁の選任する監督人及び行政の福祉部門が担うこと

理由
保佐及び補助の利用促進を考えるに当たって、家裁の実情をY家庭裁判所の申立段階においてみると、以下の通りです。
・後見類型は、ヒアリングを参与が行い、主に書類チェックを短時間で行います。
・保佐・補助類型は、ヒアリングを調査官が行い、時間を掛け丁寧に本人同意を得ながら
 代理権、同意権設定の作業を進めます。
従って、保佐・補助類型が理想であっても現状のまま促進することは家裁に過大負担となり、家裁の実務上困難と言えないか。また、家裁は監督業務も担っていますが実質的には財産管理のチェックのみに終始していて、身上監護についての助言・指導(スーパーバイズ)はまったく期待できません。そもそも不可能な被後見人等の生活支援(社会福祉)の監督を家裁が担う制度設計に問題があります。従って、保佐・補助類型利用促進の前に裁判所の審判業務と監督業務の分離など制度の抜本的改革が必要です。

12.「成年被後見人等の医療、介護等に係る意思決定が困難な者への支援」について
委員会意見 25ページ 9行目
………………………………
○ 医療や介護等の現場において、成年被後見人等に代わって判断をする親族等がいない場合であっても、円滑に必要な医療、介護等を受けられるようにするための支援の在り方と、その中における成年後見人等の事務の範囲について具体的な検討を進め、必要な措置が講じられる必要がある。
………………………………
意見 
 認知症高齢者が急増しています。介護保険サービスを使う認知症高齢者の支援は、誰よりもケアマネージャーに負うところが大きく、成年後見制度利用についてもケアマネージャー抜きで進めることはできません。ケアマネージャーが成年後見制度利用促進を図る仕組みを作るべきではないか。

提言
 ㉓介護保険の区分認定調査員は、権利擁護の視点から生活課題、成年後見制度の利用状
  況を調査書に明記すること
 ㉔ケアマネージャーは、ケアプラン作成時に単なる介護保険サービスの利用調整ではな
  く、必要な場合には成年後見制度の利用促進を図ること

理由
 認知症高齢者の場合は、一般的にケアマネージャーが当該者の情報を一番保有しかつ最も信頼関係を築いています。特に成年後見制度利用の前後では、ケアマネージャー抜きで進めることはできません。しかし、介護保険制度と成年後見制度の連携は仕組みとしては何もできていないのが実情です。なお、障がい者の場合は、同様に新設された基幹相談センターや相談支援専門員との連携を深める必要があります。

13.「本人と後見人との間の信頼関係の構築」について
委員会意見 8ページ 17行目
………………………………
○ 制度利用が長期にわたることが見込まれる障害者については、本人と後見人との間の信頼関係の構築が極めて重要であり、家庭裁判所が本人の障害の特性を十分に踏まえた後見人を選任できるよう、適切な情報提供がなされることが望ましい。
………………………………
意見 
 本人と後見人との間の信頼関係(ラポール)構築は、対人援助では欠かすことができません。成年後見制度を使った支援でもまったく同じです。信頼関係の構築にはソーシャルワークの技術が生かされます。ここに熟達したソーシャルワーカーが、後見人として関わる意義があります。
 そのためには家族・関係機関からの情報が必要です。申立過程で本人や家族とともに「あんしんノート」を作成する等の工夫が必要です。

提言
 ㉕後見業務開始前のプロセスを後見的支援として重視すること
 ㉖本人意思を重視すること

理由
 適切な後見業務を推進するには、本人と後見人との間の信頼関係(ラポール)構築は、基本です。それが出来て初めて本人意思の尊重が行われます。その為に私たちは、出来るだけ多く、本人に会う機会を設けています。場合によっては、家裁申立前から後見的支援としてプロジェクトチームを設けて組織的に対応しています。中には申立までに三年掛けた例もあります。なお、信頼関係の構築には、受容、傾聴、自己決定尊重などソーシャルワークのスキルが生かされます。

・「真理プロジェクト」報告書
〜知的障がい者が安心して地域で暮らすために 〜
 http://www.ne.jp/asahi/hama/tubasa/mariphoukoku.pdf

・引継書「将来のためのあんしんノート」
 http://www.ne.jp/asahi/hama/tubasa/note.html

14.「市町村の制度利用促進基本計画策定」について
委員会意見 21ページ 2行目 21ページ 19行目 22ページ 2行目
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○ 促進法第23条第1項において、市町村は、国の基本計画を勘案して、当該市町村の区域における成年後見制度の利用の促進に関する施策についての基本的な計画(以下「市町村計画」という。)を定めるよう努めるものとされている。
○ 成年後見制度の利用に関する助成制度の在り方についても盛り込むこと。
○ 市町村は、当該合議制の機関を活用し、市町村計画の検討・策定を進めるほか、当該地域におけるネットワークの取組状況について調査審議し、例えば、当該地域において成年後見制度の利用が必要な人を発見し制度利用につなげる支援ができているか等、地域における取組状況の点検、評価等を継続的に行うことが望ましい。
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意見
 市町村長申立については、行政や行政担当者によって温度差があり、必要にもかかわらず市町村申立を拒否するか若しくは数年も放置されている事例もあります。そこで市町村は、制度利用促進基本計画を策定前にその利用実態を検証すべきではないか。地域での制度利用促進には、市町村は成年後見制度利用支援事業をその趣旨通りに運用し、申立支援のできる団体ともっと連携すべきではないか。

提言
 ㉗市町村は制度利用促進基本計画策定前に運用実態を検証すること  ㉘行政は、一人で抱え込まずに申立支援のできる団体と連携を図ること

理由
 Y市成年後見制度利用支援事業要綱では、申立費用の助成は区長申立に限定しています。そこで区長申立が必要な方について区役所に相談したところ、本人申立ができると判断され、申立費用の助成及び申立支援が拒否された事例があります。また、区長申立所管課と生活保護所管課の協議が整わない事例もあります。市町村の基本計画を策定する時は、こうした基本的な課題をまず解決すべきです。

15.「非弁護士による手続代理人」について
委員会意見 28ページ 6行目
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○さらに、基本計画の策定後の施策等の実施の場面においても、円滑な実施等の観点から、更なる法制上の措置等が必要となることも十分に考えられる。
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意見 
 成年後見制度利用促進委員会の意見では、利用促進には欠かすことのできない「申立支援」への言及がありません。また、内閣府の議論ではまったく俎上にのぼりませんでしたが、資力が乏しく、紛争性がない場合には、手続き的権利保障のために、家事事件手続法第22条但し書きで定める非弁護士による手続代理人が、家裁により許可されるべきではないのか。

提言
 ㉙品川区社会福祉協議会で行っている代理申立を普及させること
 ㉚家裁は、家事事件手続法第22条但し書きの非弁護士にも手続代理人を許可すること

理由
 申立支援への言及が抜けているのは、この分野が弁護士、司法書士の業務独占の分野であって、法に抵触する恐れがあるためではないでしょうか。社会福祉士でさえ、申立支援を業として行えないので、申立支援という言葉さえ使用しないようにと徹底しています。
私たちは、業として申立支援を行わないのは言うまでもありませんが、資力の乏しい人には、支援関係者の申立支援に加わります。場合によっては、申立費用も自前の基金を使って工面します。
 昨年6月にY家庭裁判所に手続代理人の許可を求めて申立の準備をしました。書記官が話を丁寧に聞いてくれましたが、事実上門前払いでした。
 私たちは法律の専門家ではありませんが、家事事件の手続過程での権利保障が重要であるからこそ家事審判法が家事事件手続法に改正されたのではないか。金子 修著の家事事件手続法逐条解説によれば、家事事件手続法第22条但し書きで非弁護士にも手続代理人の資格許可の余地を残したことについて、「家事事件の中には、紛争性がなく、比較的軽微なものについては弁護士以外の者が手続代理人として対応しても手続進行上の問題が生じず、本人の利益を害することがない場合には、裁判所の裁量で弁護士以外の者を手続代理人とする余地を認めたものである」と解説がありました。資力が乏しい人には、利用促進の観点からも非弁護士にも許可される途が拓かれるべきです。

<おわりに>
 後見業務の監督は、現行では家庭裁判所です。続いて、家庭裁判所が選任する後見監督人です。最近では、後見人候補者を推薦する各職能団体にも、家裁から監督強化が求められているようです。しかしそれだけでは不十分です。私たちは、福祉サービスで導入されている自己評価、第三者評価の仕組みを利用することを考えました。
 成年後見の分野でも、後見人候補者を利用者側が選択できるような利用者主体の仕組みに作り変えられるべきと思います。そのためには、沢山の後見サービス提供主体が必要です。こうしたグランド整備は、行政の仕事です。
 最後になりますが、これまでの成年後見制度の運用は家庭裁判所が一人主体でしたが、これからの成年後見制度は、裁判所、行政、民間の三位一体で進めていくものだと考えます。

<参考>
評価システムとは
 評価システムとは、2000年前後に当時の厚生省が取り組んだ社会福祉基礎構造改革の中で、利用者本位の社会福祉制度確立のために打ち出した手法です。事業者が質の高い福祉サービスを提供しなければ、利用者からは選択されません。自己及び第三者による評価は、福祉サービスの質の向上を図るきっかけになる仕組みです。
 社会福祉法第78条に「福祉サービスの質の向上のための措置等」として、事業者の努力義務として規定されました。

私たちが開発した法人後見用の具体的な評価ツールは、次の通りです。
1.基本
2.財産管理
3.身上監護
4.法人運営
5.その他

以上の5つの領域でそれぞれに評価項目、着眼点を設けてチェックしていくものです。
<一部例示>

後見等業務評価表(概略)
                        評価年月日    年  月  日
評価項目(選択) 着眼点(方法、ポイント) 評 価
1基本 法人基本理念 法人基本理念はあるか 理解できているか A B C
本人意思の尊重 本人意思を尊重し、意思決定支援はできているか A B C
代理権(保佐 補助) 代理権の範囲内での対応になっているか A B C
財産目録 財産目録は作成されかつ妥当か A B C
後見計画 後見計画は樹立されかつ妥当か A B C
活動の基本 活動は身上監護重視のものになっているか A B C
定期訪問 定期訪問はできているか A B C
活動記録 活動は記録されているか A B C
収入・支出管理 収入・支出の管理は適切に行われているか A B C

2財産管理 財産管理 財産把握 財産目録 財産管理 財産活用 A B C
以下省略 A B C
3身上監護 生活の質(QOL) 生活状態の把握 居住場所の適否 生活の質の向上 必要な消費 本人意思の尊重 意思決定支援
A B C
以下省略
4法人運営 組織整備
組織整備 組織運営 組織対応 責任の明確化 相互牽制 自己評価 外部評価  
人材確保 人材養成 研修実施 制度の普及啓発 経理処理 財源確保 権利擁護 個人情報の管理 守秘義務

A B C
以下省略
5その他 その他 報酬 終了事務 家裁 コンプライアンス 情報公開 課題 A B C
以下省略


以上

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