利用者を地域で支援 有識者委、素案了承2016年12月18日 10:13

<成年後見制度>
利用者を地域で支援 有識者委、素案了承
毎日新聞 2016年12月14日

 認知症や知的障害など判断能力が十分でない人の財産や権利を守る成年後見制度の利用促進策について、政府の有識者委員会は14日、地域の福祉や保健、司法関係者が利用者をチームで支援する中核機関の設置を市町村に求めることを柱とする計画素案を大筋で了承した。身寄りのない認知症の人ら支援につながりにくい人を地域で支える狙い。政府は素案を踏まえた制度利用促進基本計画を年度内にも策定する。
 
 素案によると、中核機関では本人や親族、住民らから相談を受け、地域のケアマネジャーや障害者施設支援員らが連携。弁護士会や社会福祉士会、専門家にもつないで調整し、必要な支援と首長らによる後見などの申し立てにつなげる。
 後見人となった人の相談も受けて制度の利用者の意思を尊重できるよう見守り、両者の関係が悪化した場合は家裁と調整して対応する。社会福祉協議会や民間への委託や広域設置も可能とする。
 
 多数の委員から「利用者の意思を尊重するという民法の後見人の義務規定があいまいなため、後見が財産管理に偏りがち」との指摘が出たことから、素案は、柔軟に後見人を代えられる方策を作る▽後見開始の判断材料となる診断書に本人の状態や特性を反映させることも促した。後見人や保佐人がつくと地方公務員としての地位を失うといった権利の制限についても政府に速やかな見直しを求めた。【野倉恵】

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20161215k0000m040061000c.html

見守り重視へ 促進策、政府が利用見直し2016年12月27日 06:22

成年後見制度
見守り重視へ 促進策、政府が利用見直し
毎日新聞 2016年12月20日

認知症や障害により判断能力が不十分な人の権利を守るため、成年後見制度の利用促進策を検討していた政府の有識者委員会は20日、計画の原案をまとめた。財産管理に偏りがちだった後見制度の利用を、本人の意思決定支援や見守りの重視へと転換を図る。政府は原案を基に利用促進計画を策定し、年度内に閣議決定する。

 認知症高齢者や地域で暮らす障害者が増え、意思決定を支援する成年後見制度の必要性は高まっているが、普及していない。このため有識者委員会では、全国どこでも制度を使えるようにするとともに、利用者本人がメリットを実感できる改善策を検討してきた。

 原案では、制度利用の必要な人を早期に見つけ、適切な利用につなげるため、市町村に対し、相談機能の充実を求めた。また従来の保健や医療、福祉関係者だけでなく、新たに司法も含めた連携の仕組みを、地域に構築する必要があると指摘。連携を推進するため、各市町村に中核的な機関を設置することを盛り込んだ。
 また、後見人だけに任せるのではなく、親族や福祉、地域の関係者らがチームとして本人にかかわることも進める。複数の目で見守ることで、きめ細かな対応ができるとともに、財産の横領など不正の防止にもつながるとしている。
 政府の計画を受け、市町村ごとの利用促進計画が策定される見込み。【有田浩子、山田泰蔵】

http://mainichi.jp/articles/20161221/k00/00m/040/099000c

成年後見、人材養成が鍵 地域の取り組みに温度差2016年12月27日 06:24

成年後見、人材養成が鍵 地域の取り組みに温度差
毎日新聞 2016年12月21日

2000年の介護保険制度のスタートと同時に創設された成年後見制度は、サービス提供と権利擁護で高齢者を支える両輪とされたが、財産管理が重視され、本人がメリットを実感しにくいこともあり、利用が広がらなかった。利用促進に向けた基本計画が策定されることによって、制度が必要な人を早期にみつけ、地域で支えることが期待される。一方、後見人の人材確保や不正の防止など課題もある。【有田浩子、山田泰蔵】

 政府の有識者委員会が20日まとめた計画原案では、成年後見制度の利用を促すために市区町村が中心となり、地域連携ネットワークの中核機関を整備することなどが盛り込まれた。すでに「成年後見支援センター」を設置し制度の普及啓発や人材育成に取り組んでいる自治体もあるが、地域によって事情は大きく異なる。

 「利用を促進するには、成年後見を必要とする人の把握と、その人を支える体制をどう作るかにかっている」。東京都品川区社会福祉協議会の斎藤修一・品川成年後見センター所長は指摘する。
 同センターは「ワンストップセンター」として相談の受け付けから家裁への申し立て、後見の実施まで担う。区の高齢者福祉課などと情報を共有。月2回開くケース会議で関係者が協議し、後見人をつける必要があるかどうかの方針を決定する。その後、医師や弁護士、福祉関係者らによる審査をへて、家庭裁判所に後見人の選任を申し立てる。同社協は法人として後見人になることが認められており、職員17人で分担している。資産が少ないケースや家族関係が複雑でない場合は、区などで養成した市民後見人が担うこともある。
 同区の市民後見人の一人、横地明宏さん(69)は定年退職後、都が実施した市民後見人の養成講座を受講。2年前から市民後見人として活動している。
 これまで4人を担当。週1回は自宅に赴き、契約など本人のさまざまな選択を支援する。本人が高額な化粧品を買ってしまったことを知った時は、企業と交渉し全額返金してもらった。報酬は月1万円。「ボランティアではなく職業人としての自覚が求められる」と話す。社協職員とは常に連携し、判断に迷ったときは一人で抱え込まないようにしているという。
 だが、品川区のように体制が整うところは多くない。高齢化の進展で後見のニーズは確実に増えているが、周囲の人が本人の判断能力の衰えに気付いても、どの機関に相談したらいいのか分からなかったり、介護や医療のサービスにつなげるだけだったりなど、必ずしも制度の利用に結びつかないケースも多いのが実情だ。
 また後見人の数を確保するには、弁護士ら専門職だけでは限りがあるため、厚生労働省は11年度から、市民後見人の養成事業を36都道府県約160の自治体で実施し、約1万人を養成した。市民後見人への期待は高いが、実際に家裁の選任を受けるには、品川区のようなバックアップ体制が必要だ。

後絶たぬ不正被害、簡易な財産信託検討へ

 成年後見制度の利用促進に当たって大きな課題となるのが不正の防止だ。2010年から始めた最高裁の調査によると、後見人らによる不正の被害は14年に年間で831件あり、被害総額は56億7000万円に上った。親族の後見人だけでなく、職業として後見人となる弁護士や司法書士などの専門職でも不正は後を絶たない。

 後見人の立場を悪用して、認知症の高齢女性ら3人から1億円以上を着服し、キャバクラ代などに使ったとして業務上横領罪に問われた元弁護士に対し、東京地裁で10月に開かれた判決公判。裁判官は懲役6年の実刑を言い渡し「被後見人らの信頼を裏切る背信的な犯行で、成年後見制度に対する社会の信頼を揺るがしかねない」と指弾した。
 制度上、後見人の監督は原則、家庭裁判所が担うが、政府の有識者委員会では「事務負担が増えており、家裁の監督だけでは不十分だ」との意見が多数出た。このため計画原案では、後見人の倫理観や家裁の監督だけに頼らず、関係機関や専門職団体などが、重層的に不正防止に取り組む必要が指摘された。
 対策の一つとして注目されているのが12年から始まった「成年後見制度支援信託」だ。本人の財産のうち、日常的な支払いをする預貯金は後見人が管理し、普段は使わない金銭は信託銀行などに託す仕組み。信託財産を払い戻したり解約したりするには家裁による指示書が必要なため、多額の不正はしにくい。
 同制度の利用者は14年は2764人(1009億円)、昨年は6563人(2109億円)と飛躍的に増えている。これに伴い、15年の後見人らによる不正件数は前年より約4割減り、被害額も5割減近い29億7000万円に抑えられた。
 しかし、銀行側にとっては収益につながりにくく、新たなシステム導入など経費負担も大きいため、大手信託銀行以外が導入するにはハードルが高い。
 そのため、計画原案には「成年後見制度支援信託に並立・代替する新たな方策の検討」が盛り込まれ、今後、地方銀行でも実施できるような簡易な方策が検討される見通しだ。

 ■ことば
成年後見制度
 認知症や障害があり判断能力が十分でないため、契約など法律行為の意思決定が困難な人たちについて、適切な選択ができるよう後見人等が支援する制度として民法を改正し、2000年4月に施行された。申し立てを受けた家庭裁判所が本人との利害関係などを考慮し、後見人を選任する。後見人には配偶者・親族、弁護士、司法書士、社会福祉士のほか、社会福祉協議会などの法人(法人後見)や研修を受けた地域の住民(市民後見人)もなることができる。

http://mainichi.jp/articles/20161221/ddm/016/100/014000c